映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』を鑑賞しました。
本作は、2023年公開の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の続編にして完結編です。
前作で彰(水上恒司)や石丸(伊藤健太郎)を失った百合(福原遥)と千代(出口夏希)が、その後をどう生きたのかが描かれます。
年老いた千代(倍賞千恵子)の物語は良かったものの、今回は現代の恋愛映画という印象が強く、個人的には前作ほど心に残りませんでした。
※この記事では、映画の内容と結末に触れています。
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本作は、以前まとめた「2026年8月に映画館で観たい注目映画5選」でも紹介しています。
★30秒で結論
評価:★★★☆☆ 3.0
最も良かったのは、年老いた千代(倍賞千恵子)の戦後の人生が明かされ、最期を迎える前に石丸(伊藤健太郎)が現れる場面です。
林吉(井之脇海)との人生を大切にしながら、心の中では石丸を忘れずに生きてきたことが伝わりました。
一方で、百合と涼(細田佳央太)の恋愛や、学校を舞台にした描写には、細かな違和感も残りました。
前作のように、恋愛を通して戦争の理不尽さを描く作品を期待すると少し違いますが、百合や千代のその後を見届ける完結編にはなっています。
この映画はこんな人におすすめ
強くおすすめしたい相手は、正直なところ特に浮かびませんでした。
あえて挙げるなら、次のような人には合うと思います。
- 前作を観て、百合や千代のその後が気になっている人
- 過去の恋を抱えたまま、新しい恋へ進む物語が好きな人
- 細田佳央太・倍賞千恵子のファン
作品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。 |
| 公開日 | 2026年8月7日 |
| 上映時間 | 128分 |
| 製作国 | 日本 |
| 監督 | 新城毅彦 |
| 脚本 | 山浦雅大 |
| 原作 | 汐見夏衛 |
| 主な出演 | 福原遥、細田佳央太、出口夏希、豊嶋花、井之脇海、伊藤健太郎、中嶋朋子、水上恒司、松坂慶子、倍賞千恵子ほか |
| 配給 | 松竹 |
| 映倫区分 | G(年齢にかかわらず鑑賞可能) |
原作小説『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』
本作は、汐見夏衛の同名小説を原作としています。
映画と原作では、登場人物の年齢や物語の設定などに違いがあります。
映画を観て、百合と涼の物語や、彰とのつながりが原作ではどのように描かれているのか気になった方は、原作小説もチェックしてみてください。
あらすじ(ネタバレなし)
特攻隊員・彰(水上恒司)との別れから7年。
彰の夢でもあった高校教師になった百合(福原遥)は、今も彼への想いを抱えながら生きていました。
そんな百合の前に現れたのが、彰の面影を持つ青年・涼(細田佳央太)です。涼は臨時的任用教員として、百合が担任するクラスの副担任になります。
まっすぐに想いを寄せる涼に心を動かされながらも、百合は彰を裏切るようで、新しい恋へ踏み出せません。
その頃、百合はホスピスで余生を過ごす年老いた千代(倍賞千恵子)と出会います。
良かったところ
千代の戦後の人生が明かされた
本作で最も印象に残ったのは、年老いた千代(倍賞千恵子)の物語です。
石丸を失った千代が、戦後に林吉(井之脇海)と結婚し、どのような人生を歩んできたのかが明かされます。
千代は石丸を忘れたわけではありません。それでも林吉との暮らしを大切にし、3人の子どもにも恵まれました。
林吉も、千代の心に石丸がいることを知りながら、その想いを消さなくていいと受け止めます。
林吉との人生と、石丸への想い。そのどちらも千代にとって大切なものだったことが伝わりました。
最期に石丸が現れる場面
千代が亡くなる前に石丸(伊藤健太郎)が現れ、若い頃の千代(出口夏希)の姿に戻る場面には感動しました。
千代は石丸に、幸せな人生だったと伝えます。
それは林吉との人生を否定する言葉ではなく、石丸から贈られた「君に幸あれ」という願いに、長い人生を経て答えた言葉だったように感じました。
最後はやはり石丸だったのだと思う一方で、林吉との人生も心から大切にしていた。その両方が伝わる場面でした。
倍賞千恵子の穏やかな演技も含め、本作で最も心に残りました。
細田佳央太の演技は良かった
涼を演じた細田佳央太の演技も良かったです。
明るく生徒たちと接する姿や、百合へまっすぐに想いを伝える姿には、彰と通じる優しさがありました。
百合の心に別の人がいると感じながら、それでも彼女を想い続ける難しい役を自然に演じていたと思います。
後述するように涼の設定には気になるところがありましたが、細田佳央太の演技自体に不満はありません。
気になったところ
前作よりも恋愛映画の印象が強かった
前作も、百合と彰の恋愛が物語の軸でした。
ただ、その恋愛を通して、戦争によって若者の夢や未来が奪われる理不尽さが描かれていました。
現代の高校生である百合の視点から戦時中を見ることで、若い世代が戦争について考える入口にもなる作品だったと思います。
前作には「そんなはずないでしょ」と思う場面もありました。それでも、現代の高校生が突然あの時代へ行ったと考えれば、少し納得できる部分もありました。
前作を観たあとには、また知覧へ行きたいと思いました。最後に知覧を訪れたのは8年前です。また、20年以上前には、特攻隊員たちを支え「特攻の母」と呼ばれた鳥濱トメさんが営んでいた富屋食堂も訪れました。
今回も、戦争の記憶を次の世代へ伝える場面はあります。
しかし、物語の中心は、百合が彰への想いを抱えながら、涼との新しい恋へ踏み出せるかどうかです。
そのため、前作よりも現代の恋愛映画という印象が強く、個人的には前作ほど心に残りませんでした。
生まれ変わりなら同じ配役でも良かったのでは?
涼は彰の面影を持ち、過去を思わせる夢も見ています。
原作では彰の生まれ変わりとして描かれていますが、映画では少しぼかした表現になっていました。
細田佳央太の演技に不満はありません。
ただ、彰の生まれ変わりとして描くのであれば、水上恒司がそのまま演じても良かったのではないかと少し思いました。
彰と涼を別の人間として見せるための配役だとは思います。それでも、生まれ変わりなのか、単に似た存在なのかが分かりにくく感じました。
学校をめぐる細かな設定が気になった
百合が働く学校は進学校として描かれていますが、生徒たちや授業中の雰囲気からは、あまり進学校らしさを感じませんでした。
また、大学院生である涼が臨時的任用教員として働いている間、大学院はどうなっているのかも気になりました。
涼が百合を「先輩」と呼ぶことも、職場では百合のほうが経験者なので間違いではありません。それでも、少し不自然に感じました。学校では基本「先生」呼びだと思います。
さらに、生徒の紗良(豊嶋花)から百合へ直接メールが届く場面もあります。
学校用の連絡手段なのかもしれませんが、教師と生徒が個人的にメールでつながっているように見えたことが気になりました。
どれも物語を大きく壊すほどではありません。ただ、こうした細かな疑問が重なり、恋愛や感動に入り込み切れない部分がありました。
長崎と吾妻山公園には行ってみたい
作品への評価とは別に、映画に映る長崎の街並みは印象に残りました。
映画を観たあとは、久しぶりに長崎へ行きたくなりました。
また、百合と涼が出会う「百合ヶ丘公園」のロケ地となった、神奈川県二宮町の吾妻山公園にも行ってみたいです。
映画をきっかけに、実際の場所を訪ねたくなったことは、本作を観て良かった点の一つでした。
総評
『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』は、前作で残された百合と千代の人生を描く続編・完結編です。
年老いた千代(倍賞千恵子)が戦後をどう生きたのか、そして最期に石丸(伊藤健太郎)へ幸せな人生だったと伝える場面には感動しました。
一方で、前作のように戦争について考えさせられる作品というより、今回は現代を舞台にした恋愛映画としての印象が強く残りました。
学校や涼の設定にも細かな違和感があり、個人的には前作ほど響きませんでした。
それでも、前作を観た人が百合や千代のその後を見届けるための完結編にはなっています。
映画を観たあとに長崎や吾妻山公園へ行ってみたいと思えたことも、印象に残りました。
評価:★★★☆☆ 3.0
30代男のひとこと
林吉との人生を大切にしながら、最後まで石丸を忘れなかった千代。
石丸に、幸せな人生だったと伝えられたことが、この映画で一番良かったです。