映画『しびれ』を鑑賞しました。
観終わって最初に出てきた感想は、「重かったなぁ」です。
主人公・大地が幼いころから抱えてきた孤独を、約20年にわたって追っていく物語。安心できる場面がほとんどなく、どこまでいっても苦しさが続きます。
ただ、俳優陣の演技はすごかったです。
青年期の大地を演じた北村匠海だけでなく、幼年期・少年期を演じた子役たちも良かった。大地はほとんど言葉を発しないので、表情や視線、身体の動きだけで気持ちを見せなければなりません。
演じる俳優が変わっても、ずっと同じ大地を見ているようでした。
宮沢りえの変化にも驚きました。
一方で、時間の経過や登場人物の感情をつかみにくい部分があり、最後の場面も自分の中ではうまく整理できませんでした。
本作は「2026年9月に映画館で観たい注目映画6選」でも紹介しています。
※この記事では、映画の内容と結末に触れています。
★30秒で結論
評価:★★★☆☆ 3.0
子役たちから北村匠海まで、大地を演じた4人が印象に残りました。
大地はほとんど話しません。それでも、目線や立ち方、歩き方から、寂しさや不安が伝わってきます。年齢ごとに演じる俳優は変わりますが、同じ人物を見続けている感覚がありました。
施設に入ったあとの亜樹を演じた宮沢りえにも驚きました。表情だけでなく身体つきまで変わっていて、それまでの年月が見た目にも表れていました。
ただ、物語は少し難しかったです。
監督自身の半生がもとになっているため、すべてを分かりやすく説明する映画ではないのでしょう。それでも、時間や感情のつながり、結末が何を示していたのかは理解し切れませんでした。
また、全編を手持ちカメラで撮影しているため画面の揺れが多く、途中で少し酔いそうになりました。
この映画はこんな人におすすめ
- 北村匠海の抑えた演技を観たい人
- 宮沢りえをはじめ、俳優陣の演技をじっくり観たい人
- 言葉に頼らない表現が好きな人
- 重く静かな家族の物語を観たい人
- 内山拓也監督の作品が好きな人
作品情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | しびれ |
| 英題 | NUMB |
| 日本公開日 | 2026年9月25日 |
| 上映時間 | 118分 |
| 製作国 | 日本 |
| 監督・原案・脚本 | 内山拓也 |
| 主な出演 | 北村匠海、宮沢りえ、榎本司、加藤庵次、穐本陽月、赤間麻里子、奥野瑛太、永瀬正敏ほか |
| 配給 | NAKACHIKA |
| 映倫区分 | PG12 |
あらすじ(ネタバレなし)
日本海沿いの町で暮らす少年・大地。
幼いころに暴君のような父親と暮らした影響から、言葉を発しなくなっていました。
現在は母・亜樹(宮沢りえ)と二人で暮らしています。しかし、夜の仕事をする亜樹は家を空けることが多く、生活にも余裕がありません。
やがて二人は叔母の家に身を寄せますが、そこにも大地が安心できる居場所はありませんでした。
孤独を抱えたまま成長していく大地は、姿を消した父親の行方を追い始めます。
良かったところ
言葉を発しない大地から目が離せなかった
本作で最も印象に残ったのは、大地を演じた俳優たちです。
幼年期を穐本陽月、少年期を榎本司と加藤庵次、青年期を北村匠海が演じています。
大地には、感情を説明するようなセリフがほとんどありません。
何を考えているのか。何を怖がっているのか。なぜその場所から動かないのか。
観客は、大地の表情や視線を見ながら想像することになります。
子役たちの演技が良かったです。
言葉を使わない役は難しいと思いますが、寂しさや居心地の悪さが伝わってきました。大人たちに囲まれていても、大地だけがずっと一人でいるように見えます。
北村匠海の演技もかなり抑えられていました。
激しく感情を見せるわけではないのに、子どものころから抱えてきたものが身体に残っているようでした。
演じる俳優が変わっても、大地の目や雰囲気は途切れません。
「この4人をどうやって見つけたんだろう」と思うくらい、一人の大地として自然につながっていました。
施設に入ったあとの宮沢りえに驚いた
母・亜樹を演じた宮沢りえも印象的でした。
特に驚いたのは、亜樹が施設に入ったあと、再び登場する場面です。
顔つきや髪形だけでなく、お腹の出方を含めて身体つきも変わっていました。最初に登場した亜樹とは、同じ人とは思えないほどです。
長い年月が経ったことをセリフで説明するのではなく、亜樹の姿を見せることで伝えていました。
見た目の変化だけではありません。
話し方や動きにも、それまでとは違うものがあります。亜樹がどのような時間を過ごしてきたのか、すべては説明されません。それでも、楽な時間ではなかったことは伝わってきました。
物語には理解し切れないところもありましたが、この場面の宮沢りえはすごかったです。
音楽の少なさが、息苦しさを強めていた
本作は、音楽で感情を盛り上げる場面がほとんどありません。
代わりに聞こえてくるのは、風や雪、海、足音などです。
大地自身も言葉を発しないため、映画全体が静かでした。
ただ、落ち着ける静けさではありません。
誰も大地の気持ちを聞かず、大地も何も話さない。その間を埋めるものがないため、こちらまで息苦しくなります。
音楽が少ないからこそ、大地の孤独から逃げられないような感覚がありました。
観ていて気になったところ
救いが少なく、かなり重かった
大地が幼いころから安心して過ごせる場所は、ほとんどありません。
母親は家に帰らず、叔母の家にもなじめない。父親の存在も、大地を救ってくれるものではありませんでした。
年齢を重ねれば何かが変わるのかと思っていましたが、簡単には変わりません。
観ている間、何度も「そろそろ大地に救いがあってほしい」と思いました。
小さなぬくもりを感じる瞬間はあります。それでも、そこまでの苦しさが大きく、観終わったあとには重さのほうが残りました。
時間と感情のつながりをつかみにくかった
物語は、大地の幼年期から青年期まで時系列に沿って進みます。
ただ、「ここから何年後」と分かりやすく区切りながら見せる作品ではありません。
気づくと大地が成長し、周囲の環境も変わっています。
その間に何があったのか。なぜ登場人物がその行動を選んだのか。説明されない部分を自分で補いながら観る必要がありました。
監督の半自伝的な作品と知り、細かな事情まで説明する映画ではないのかもしれないとも思いました。
ただ、私は時間の経過や登場人物の気持ちの変化を追いきれないところがありました。
特に最後の大地が何を示していたのかは、正直よく分かりませんでした。
実際の記憶は、映画の物語のようにきれいにはつながらないものです。
とはいえ、映画として観ると、私はもう少し手がかりがほしかったです。
特に最後の大地が何を示していたのかは、正直よく分かりませんでした。
手持ちカメラの揺れで酔いそうになった
本作は、全編を手持ちカメラで撮影しています。
固定された画面ではなく、カメラが大地の近くを追いかけ続けます。
その場に居合わせているような生々しさはありました。
一方で、私は画面の揺れがかなり気になりました。
グラグラと動く映像を長く観ているうちに、途中で少し酔いそうになります。
大地の不安定な生活には合っているのだと思います。ただ、個人的には観やすい映像ではありませんでした。
画面の揺れに弱い人は、少し注意したほうがよさそうです。
タイトルと結末は理解し切れなかった
タイトルの『しびれ』についても、観終わったあとに少し考えました。
大地の状態や家族から受けた傷と関係しているのかもしれませんが、自分の中では答えが出ませんでした。結末と同じく、ここも理解し切れなかったところです。
いくつか思い浮かびましたが、自分の中で「これだ」と思えるものはありませんでした。
結末についても同じです。
余白を残した終わり方なのだと思いますが、私は何を受け取ればいいのか、うまく整理できませんでした。
無理に分かったふりをするより、「自分には難しかった」というのが率直な感想です。
総評
『しびれ』は、俳優陣の演技が強く印象に残る映画でした。
特に、大地を演じた4人が良かったです。
ほとんど言葉を発しない人物を、目線や身体の動きで表現する。年齢ごとに俳優が変わっても、一人の大地の人生としてつながっていました。
施設に入ったあとの宮沢りえの変化にも驚かされます。
一方、救いの少ない展開はかなり重く、時間の経過や登場人物の感情、結末にはつかみにくさがありました。
半自伝的な作品だからこそ、分かりやすい物語に整理しなかったのかもしれません。
それでも、私には少し難しかったです。
評価は、★★★☆☆ 3.0。
物語の答えを探すというより、俳優たちの顔や身体から伝わってくるものを観る作品だと感じました。
30代男のひとこと
子役たちも含め、大地を演じた4人が良かったです。
ほとんど話さない役なのに、何となく気持ちが伝わってくる。
ただ、物語と結末はちょっと難しかったです。そして、画面の揺れで少し酔いそうになりました。
これから映画館で観る作品を探している方は、「2026年9月に映画館で観たい注目映画6選」も参考にしてください。
作品の詳細は、映画『しびれ』公式サイトで確認できます。