『豊臣兄弟!』第30回「清須会議」感想|偶然を勝ち筋に変えた秀吉と小一郎

※この記事には、第30回「清須会議」のネタバレが含まれます。

『豊臣兄弟!』第30回「清須会議」は、秀吉と小一郎が清須会議を自分たちの望む方向へ動かしていく回でした。

ただし、すべてが最初から二人の計画どおりだったわけではないように思います。

三法師の誘拐事件は、どこまでが秀吉と小一郎の仕組んだことで、どこからが偶然だったのでしょうか。

私は、誘拐そのものは二人にとっても想定外だったのではないかと感じました。

それでも、事前に根回しを重ねていたからこそ、突然起きた出来事を自分たちの好機へ変えられた。

今回描かれたのは、未来を完璧に予測する豊臣兄弟ではなく、偶然を勝ち筋に変える豊臣兄弟の強さだったと思います。

前回、第29回「天下への道」では、光秀の最期を経て、秀吉が「上様の思いを継ぐ」と決意しました。

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第30回「清須会議」のあらすじ

信長と信忠を失った織田家では、幼い三法師がすでに後継者と決まっていました。

しかし、三法師はまだ幼く、誰が名代として織田家を動かしていくのかが問題となります。

信長の息子である信雄と信孝が対立するなか、秀吉(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)は、清須会議へ向けて動き始めます。

小一郎は重臣たちの意向を探り、秀吉も会議の前から根回しを進めました。

秀吉が考えたのは、信雄と信孝のどちらかを名代にするのではなく、家老たちを中心に織田家を支える体制です。

ところが、清須会議の前日に三法師が誘拐される事件が発生。

この事件をきっかけに、秀吉と小一郎の計画は大きく動き始めます。

三法師の誘拐は、どこまで計画されていたのか

今回、特に気になったのは、三法師の誘拐事件です。

誘拐まで秀吉と小一郎が仕組んでいたのか。それとも、本当に予想外の出来事だったのか。

ドラマを見ている限りでは、誘拐そのものは二人にとっても想定外だったように感じました。

しかし、二人は突然の事件に戸惑うだけではありませんでした。

それまで進めてきた根回しと三法師の一件を結びつけ、すぐに政治へ利用します。

ここで効いてきたのが、清須会議までに積み重ねてきた準備です。

偶然が起きただけでは、それを好機には変えられません。

小一郎が重臣たちの意向を探り、秀吉も会議の前から話を通していた。すでに準備が整っていたからこそ、想定外の事件が起きても、すぐに次の一手を打てたのでしょう。

どこまでが計画で、どこからが偶然だったのかは分かりません。

だからこそ、「もしかしたら、本当にこのような駆け引きがあったのかもしれない」と、史実の余白を想像できる場面でした。

言葉にしなくても同じ方向を向く秀吉と小一郎

三法師の一件に対応する秀吉と小一郎を見ていると、二人が細かく言葉を交わさなくても、同じ方向を向いていることが伝わってきました。

秀吉がすべてを説明し、小一郎がその指示に従っているわけではありません。

小一郎は秀吉の狙いを理解し、自分で考えて動いています。

秀吉もまた、小一郎なら自分の意図を分かってくれると信じているように見えました。

今回の兄弟の強さは、完璧な計画を立てていたことではありません。

想定外の出来事が起きたときにも、二人が同じ方向を向いたまま動けたことです。

事前の根回しと、言葉にしなくても通じ合う兄弟の関係。

その二つがあったからこそ、三法師の誘拐という想定外の出来事を、自分たちの勝ち筋へ変えられたのだと思います。

家老による体制から、一気に筆頭家老へ

秀吉は、まず家老たちによる体制を作り、その後、時機を見ながら家老の中でも一歩抜きんでようと考えていたのかもしれません。

しかし、清須会議の前日に三法師の誘拐事件が起きました。

この出来事を利用すれば、段階を踏まずに一気に前へ出られる。

秀吉と小一郎は、そう判断したのではないでしょうか。

最初から清須会議で筆頭家老になるところまで計画していたのではなく、偶然によって計画を前倒しできると見抜いた。

その結果、秀吉は筆頭家老と名乗り、ほかの家老たちよりも一歩抜きんでた存在となりました。

用意していた道筋だけにこだわらず、状況が変われば計画も変える。

ここにも、偶然を勝ち筋に変える秀吉と小一郎の強さが表れていたと思います。

市と柴田勝家の再婚を提案した秀吉の狙い

最初に秀吉が、市(宮﨑あおい)と柴田勝家(山口馬木也)の再婚を持ち出したときは、その意図がよく分かりませんでした。

しかし、秀吉が家老たちを中心とした体制を考えていたとすれば、少し見え方が変わります。

勝家と信長の妹である市が結婚すれば、勝家と織田家とのつながりはさらに強くなります。

信雄や信孝を名代にせず、家老たちで織田家を支えるためにも、勝家と織田家の関係を強めておく必要があると考えたのかもしれません。

秀吉がこの再婚を提案したのは、勝家を味方につけるためだけではなく、まずは家老たちによる体制を安定させるためだったように思います。

ところが、秀吉が筆頭家老として一気に前へ出たことで、市と勝家の再婚にも別の意味が生まれます。

秀吉が最初に持ち出した再婚話を、今度は市が秀吉に対抗するための手段として利用する。

同じ再婚でも、秀吉が提案したときと、市が自ら決断したときとでは、その意味がまったく違って見えました。

宮﨑あおいが演じた、市の悲しみと覚悟

今回、市を演じる宮﨑あおいさんの演技も印象に残りました。

信長を失った悲しみを抱えていた市が、秀吉の嘘を知り、秀吉と対立する覚悟を決めていく。

その変化が、表情や佇まいから伝わってきました。

秀吉は、天下へ進むために、市との信頼を捨てました。

市にまで嘘をついたということは、秀吉自身も市と対立する覚悟を決めていたのだと思います。

そして市も、ただ秀吉に裏切られたままでは終わりませんでした。

自ら勝家との再婚を決め、秀吉に対抗しようとします。

信長を失って悲しむ市から、勝家とともに秀吉の前へ立ちはだかる市へ。

大声で怒りを表すのではなく、静かな表情のなかに市の怒りと覚悟を感じさせる宮﨑あおいさんの演技がすごかったです。

市と勝家がもう少し早く再婚していたら、その後の関係は変わっていたのでしょうか。

ただ、最初に二人の再婚を持ち出したのは秀吉です。

秀吉が作ろうとした関係が、結果的に自分へ対抗するための関係へ変わっていくところに、皮肉を感じました。

おわりに

第30回「清須会議」は、秀吉と小一郎が清須会議を動かし、秀吉が筆頭家老へと進んでいく回でした。

しかし、すべてが二人の計画どおりに進んだわけではなかったと思います。

当初は家老たちによる体制を作り、その後、時機を見て家老の中から一歩抜きんでる。

秀吉は、そのような長期的な道筋を考えていたのかもしれません。

ところが、清須会議の前日に三法師の誘拐事件が起きました。

事前の根回しがあり、秀吉と小一郎が言葉にしなくても同じ方向を向いていたからこそ、二人は偶然を好機へ変え、一気に筆頭家老まで進むことができたのでしょう。

一方で、秀吉は天下へ進むために市との信頼を捨て、市と対立する覚悟も決めました。

そして市も、勝家との再婚によって秀吉へ対抗しようとします。

偶然を勝ち筋に変えた豊臣兄弟。

しかし、その勝ち筋をつかんだことで、市と勝家という新たな相手も生まれました。

秀吉と小一郎がつかんだ好機が、今後どのような争いにつながっていくのか楽しみです。

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