「史実と違う」より、「こうだったかもしれない」が面白い
本能寺の変後、日本の歴史が大きく動き始めた第28回。
毎話、SNSでは「史実と違う」といった声も見かけます。
もちろん史実を大切にすることは大事です。
でも私は、それ以上に「もし本当にこうだったら?」と想像させてくれる人物描写に引き込まれました。
今回の『豊臣兄弟!』は、そんな大河ドラマならではの魅力を改めて感じた一話でした。
あらすじ
本能寺の変で織田信長(小栗旬)が討たれたという知らせを受けた豊臣秀吉(池松壮亮)。
毛利との和睦を急ぎ、中国大返しを決断します。
一方、明智光秀(要潤)は新たな政権づくりを進め、各地の武将たちも信長亡き後の決断を迫られることに。
天下の行方を左右する戦いへ向け、日本の歴史が大きく動き始めました。
徳川家康(松下洸平)の描き方が面白かった
今回、一番印象に残った人物は徳川家康でした。
周囲には伊賀方面へ向かうように見せながら、最終的には船で岡崎へ戻るという判断。
史実で知られる「伊賀越え」とは異なる描き方でしたが、私はとても面白い演出だと感じました。
松下洸平さん演じる家康は、これまでも腹の内を簡単には見せない人物として描かれてきました。
信長への恐怖や警戒心を経て、その慎重さやしたたかさがさらに深まってきたように感じます。
「この家康なら、そう判断したのかもしれない。」
そんな説得力があり、今後どのように天下人への道を歩んでいくのかますます楽しみになりました。
柴田勝家(山口馬木也)の葛藤に胸を打たれた
もう一人、印象に残ったのが柴田勝家です。
信長の死を知り、すぐにでも仇を討ちたい。
しかし背後には上杉軍がおり、軽々しく動くことはできない。
その葛藤が山口馬木也さんの演技から痛いほど伝わってきました。
前田利家(大東駿介)とのやり取りからも、
「勝家は本当に信長を慕っていたんだ。」
という思いが伝わってきます。
歴史上の武将ではなく、一人の人間として描かれていたことがとても印象的でした。
※このシーンを見て、賤ヶ岳の戦いがどのように描かれるのか、今から楽しみになりました。
信長から授かった草履がすべてを物語っていた
ラストシーンも忘れられません。
秀吉と秀長(仲野太賀)が、信長から授かった草履を見つめる場面です。
序盤で兄弟が「家宝にします」と大切にしていた草履。
その草履を見つめるだけで、信長との出会いから本能寺の変まで積み重ねてきた時間が一気によみがえってきました。
最初から見続けてきた人にとっては、涙なくしては見られないシーンだったと感じました。
私が大河ドラマを好きな理由
今回改めて感じたのは、私が大河ドラマを好きな理由です。
SNSでは「史実と違う」という意見もよく見かけます。
もちろん、史実を知ることは歴史ドラマを楽しむ上で大切です。
でも私は、それだけではないと思っています。
歴史に残っているのは出来事だけ。
その時、武将たちが何を考え、どんな葛藤を抱えていたのかは誰にも分かりません。
だからこそ大河ドラマには、
「もしかしたら本当にこうだったのかもしれない。」
と思わせてくれる面白さがあります。
今回の家康の判断も。
勝家の葛藤も。
そして秀吉兄弟が草履を見つめた最後のシーンも。
史実には残っていない人物の感情を丁寧に描いてくれるからこそ、歴史上の人物がぐっと身近に感じられました。
私は、そんな「史実の余白」を想像させてくれるところが、大河ドラマの一番好きなところです。
おわりに
第28回は、中国大返しという歴史の転換点を描いた回でした。
しかし私の中で印象に残ったのは、戦の駆け引きではなく、それぞれの人物が抱える思いや葛藤でした。
史実を知っていても、「こうだったかもしれない」と想像しながら楽しめる。
次回はいよいよ山崎の戦い。
この大河ドラマがどんな人物像を描いてくれるのか、今から楽しみです。