映画『mentor』感想|綾野剛の本音が読めない演技と、3人が過ごした15年【ネタバレあり】

映画『mentor』を鑑賞しました。

綾野剛が大好きなので、今回も演技を楽しみにしていました。観ている間はずっと「本当にそう思っているのか?」「何か隠していないか?」と、演じる埜本を疑っていました。

どこかで復讐するのではないかと思っていたのですが、想像していた展開とは違いました。それでも面白かったです。

観終わって考えてしまったのは、埜本、龍之介、拓海が、それぞれ過ごしてきた15年間。同じ火事に関わった3人でも、その後の生き方はまったく違います。誰の立場で考えるかによって、感じることも変わりました。

最後の展開には少し引っかかりが残りましたが、綾野剛・磯村勇斗・末澤誠也の演技が良かった一本です。

※この記事では、映画の内容と結末に触れています。

30秒で結論

評価:4.0/5.0

綾野剛の、穏やかに振る舞いながらも取り繕っている感じが伝わる演技がすごかったです。怒りをあらわにする場面との違いも印象に残りました。

火事について別の可能性が出てきたことで、3人が信じてきたことや、生き方まで揺らいでいく。真実がはっきりしないからこそ、それぞれの15年をどう受け止めればいいのか考えてしまいました。

海で花火をする場面は良かっただけに、その後の拓海の姿には怖さと、少し残念な気持ちが残りました。

この映画はこんな人におすすめ

  • 綾野剛・磯村勇斗・末澤誠也の演技を観たい人
  • 登場人物それぞれの立場で考えながら映画を観たい人
  • 本音の読めない人物が登場する物語が好きな人

作品情報

項目内容
作品名mentor
日本公開日2026年10月16日
上映時間115分
製作国日本
脚本・監督𠮷田恵輔
主な出演磯村勇斗、末澤誠也、綾野剛、木南晴夏、酒井若菜、川上麻衣子、二村仁弥、黒沢あすか、田村泰二郎
配給エイベックス・フィルムレーベルズ、スターサンズ
映倫区分G(年齢にかかわらず鑑賞可能)

出典:映画『mentor』公式サイト、映画.com作品情報

あらすじ(ネタバレなし)

少年時代の花火遊びで、アパート火災を起こした龍之介と拓海。その火事で、住人の埜本は妻子を失い、自身も大きな火傷を負いました。

15年後、龍之介(磯村勇斗)はアーチェリーに打ち込み、日本代表を目指しています。一方、拓海(末澤誠也)は過去の出来事から抜け出せずにいました。

そんな二人の前に、埜本(綾野剛)が再び現れます。

しかし、埜本は恨みをぶつけることなく、優しく接してきます。その態度を不審に思う龍之介と、救われる思いで埜本を頼る拓海。

再会をきっかけに、3人の関係が変わっていきます。

綾野剛の、取り繕った穏やかさがすごかった

埜本は穏やかに話していても、どこか取り繕っている感じがありました。

優しい言葉をかけているのに、そのまま信じていいのか分からない。綾野剛の話し方や表情を見ながら、ずっと本音を探していました。

特に、フィールドアーチェリーの場面で怒りをあらわにしたときは、それまでの取り繕った穏やかさとの違いがすごかったです。綾野剛、やっぱりうまいなぁと思いました。

ただ、観終わって残ったのは、その不気味さだけではありませんでした。

多くの本を読み、時間をかけて、今の自分をつくってきた埜本。そうまでして自分を偽り続けてきたことが悲しかったです。

そして、火事について別の可能性を聞かされ、崩れていく。そこまでして過ごしてきた時間は何だったのかと思うと、なんとも言えないむなしさがありました。

龍之介とアーチェリーの関係が気になった

磯村勇斗が演じる龍之介は、最初は結構サバサバしているように見えました。

拓海との違いもあり、過去のことを割り切って生きているのかなと思ったのです。

でも、龍之介も母親を亡くしています。できるだけ過去を忘れようと、夢を見つけて努力してきたことが分かると、最初の印象が変わりました。

磯村勇斗も、相変わらず演技がうまかったです。最初はサバサバして見えた龍之介から、抱えているものが少しずつ伝わってきました。

特に気になったのは、罪の意識とアーチェリーの調子の関係です。

過去を忘れようと競技に打ち込んでいたときは、調子が良かった。それが、火事はタバコの火が原因だったかもしれないと知った頃から崩れ、日本代表からも漏れてしまいます。

自分たちのせいではなかったかもしれない。それなら少し楽になれそうなのに、競技では逆のことが起きる。

メンタルが大事なアーチェリーだからこそ、この変化が気になりました。龍之介にとって、罪の意識は苦しいだけでなく、努力を続ける理由にもなっていたのかもしれません。

拓海には同情したけれど、共感できないところもあった

末澤誠也のことは今回初めて知りました。Aぇ! groupのメンバーなんですね。

演じる拓海には、最初は同情していました。

特に、父親が自ら命を絶つ場面は衝撃的でした。火事だけでなく、その後に起きたことも抱えて生きてきたのだと思うと、簡単に前を向けない気持ちも分かります。

ただ、埜本への依存が強くなっていく姿には、だんだん違和感が出てきました。

謝罪をして、相手から自分の苦しさもいたわってもらう。そのこと自体に満足しているように見える場面は、共感できませんでした。

謝る相手のためなのか、それとも自分が慰めてもらうためなのか。観ながら、そこが気になりました。

それまでの15年を考えると、誰かに分かってほしい気持ちは理解できます。それでも、拓海の行動をそのまま受け入れることはできませんでした。

確かめられない話でも、3人の15年を崩すには十分だった

火事の原因は、子どもたちの花火だったのか。それとも、タバコの火だったのか。

老人は認知症が進んでいて、確かめることができません。タバコの火が原因だった可能性が出てきても、それが真実だとは言い切れないままでした。

それでも、3人が15年間信じてきたことを崩すには、十分だったように見えました。

本当かどうかも分からない話で、それぞれが何とか続けてきた生き方まで揺らいでしまう。

埜本が自分を偽ってきた時間も、龍之介が競技に打ち込んできたことも、拓海が抱えてきた罪悪感も、では何だったのかと思ってしまいます。

原因がはっきりしないからこそ、3人の15年をどう受け止めればいいのか、観ている私も分からなくなりました。

海で花火をする場面が良かったからこそ、最後は少し残念だった

龍之介と拓海が海で花火をする場面は、良かったです。

火事に関わる二人が、また一緒に花火をしている。観ながら「これからは、あの出来事を振り切って自分の人生を送ってほしいな」と思いました。

だから、その後の拓海の姿には引っかかりました。

今度は拓海自身がメンターのような存在になり、人から崇拝されているように見える。あの終わり方は怖かったです。

海の場面で少しほっとしていた分、「そっちに行くのか……」という残念さもありました。拓海には、違う道を歩んでほしかったです。

ただ、この結末への感想とは別に、最後の末澤誠也の演技は良かったです。教祖のような立ち位置になった拓海に妙な説得力があり、それも怖さにつながっていました。

総評

評価:4.0/5.0

『mentor』は、想像していた物語とは違いましたが、面白かったです。

綾野剛の演技を楽しみに観に行きましたが、磯村勇斗、末澤誠也も良かった。3人それぞれの気持ちを考えるうちに、共感したり、違和感を持ったりと、観ながらいろいろな思いが浮かびました。

結末には少し引っかかりが残っています。それでも、火事の原因を断定しないことで、それぞれの15年について考えてしまう作品でした。

30代男のひとこと

どこかで復讐すると思っていたので、想像とは違う方向へ進んで驚きました。

綾野剛の、取り繕っているときと怒りが出たときの差。やっぱりすごかったです。

本作は「2026年10月に映画館で観たい注目映画4選」でも紹介しています。

上部へスクロール