映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』感想|かわいい絵柄だからこそ戦争の残酷さが刺さる【一部ネタバレあり】

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』を観ました。

原作漫画は、以前にほんの数話だけ読んだことがあります。

かわいらしい絵柄で描かれているからこそ、突然訪れる死や戦場の残酷さが、より強く伝わってきました。

特に苦しかったのは、日本では終戦を迎えていたにもかかわらず、その事実を知らない兵士たちの戦争は終わっていなかったこと。

戦争は、終戦を迎えた日を境に、すべてが終わるわけではない。

軍の命令や価値観は人の中に残り続けるのだと感じました。

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★30秒で結論

評価:★★★★☆ 4.0

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』は、かわいらしい絵柄と戦場の残酷さのギャップが強烈な戦争アニメです。

砲撃や病気、飢えによって、隣にいた仲間の命が突然失われていく。

さらに、日本の敗戦を知らされないまま、戦争が続いていると信じて潜伏生活を送る兵士たちの姿も描かれます。

田丸と吉敷の友情や、「功績係」が仲間の死を美談に書き換える怖さも印象的でした。

原作とは異なる構成や展開もありますが、原作者の武田一義さんも共同脚本に参加し、映画として再構成されています。

かわいい絵柄だからこそ、戦争の残酷さが強く心に残る一本でした。

この映画はこんな人におすすめ

  • 戦争映画や戦争史に関心がある人
  • 田丸と吉敷の友情を見届けたい人
  • 中学生や高校生など、若い世代
  • 原作漫画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』が気になっている人
  • 板垣李光人さん、中村倫也さんのファン

逆にこんな人にはおすすめしにくい

  • 戦争による死や負傷の描写が苦手な人
  • 明るく爽快なアニメを観たい人
  • 原作とまったく同じ展開を期待している人

作品情報

項目内容
作品名ペリリュー -楽園のゲルニカ-
公開日2025年12月5日
上映時間106分
ジャンルアニメーション/戦争
原作武田一義
監督久慈悟郎
脚本西村ジュンジ、武田一義
主な声の出演板垣李光人、中村倫也ほか
アニメーション制作シンエイ動画、冨嶽
配給東映
映倫区分PG12

原作漫画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』第1巻

映画では、原作本編11巻と外伝4巻、合計15冊分の物語が映画用に再構成されています。

私は原作をほんの数話しか読んでいないため、映画との細かな違いまでは比べられませんでした。

映画では描き切れなかった人物や出来事、田丸と吉敷たちの物語をより深く知りたい方は、原作漫画もチェックしてみてください。

本作は、太平洋戦争末期のペリリュー島での戦いと、終戦を知らずに潜伏を続けた日本兵を描いています。映画公式サイトによると、日本軍約1万人のうち、最後まで生き残った兵士はわずか34人でした。

あらすじ(ネタバレなし)

太平洋戦争末期の1944年、美しい自然に囲まれたペリリュー島。

漫画家を目指していた21歳の日本兵・田丸均(板垣李光人)は、亡くなった仲間の最期を遺族へ伝える「功績係」に任命されます。

しかし、田丸が書き記すのは、戦場で起きた事実そのものとは限りません。

残された家族のため、仲間の死を立派な最期として書かなければならないこともありました。

米軍の上陸によって、島は一変します。

激しい砲撃や銃撃だけでなく、飢えや渇き、病気にも苦しめられる兵士たち。

田丸は、同期の吉敷佳助(中村倫也)と支え合いながら、過酷な戦場を生き延びようとします。

※ここから先は、物語の内容に一部触れています。

良かったところ

かわいい絵柄と残酷な戦場のギャップ

本作で最も印象に残ったのは、かわいらしいキャラクターと残酷な戦場のギャップです。

登場人物たちは丸みのある親しみやすい姿で描かれています。

しかし、戦争で起きていることは決してかわいくありません。

ついさっきまで会話をしていた仲間が突然倒れ、病気や飢えによって少しずつ弱っていく。

写実的な絵ではないからこそ、次に何が起きるか分からない怖さが際立っていました。

かわいい絵柄が残酷さを和らげるのではなく、むしろ両者の差によって戦場の異常さが強調されていたと思います。

田丸と吉敷の友情がわずかな救いだった

極限状態のなかで、田丸と吉敷が支え合う姿も心に残りました。

漫画家を目指していた田丸と、頼りになる吉敷。

性格は違っていても、二人はお互いの弱さを受け止めながら生き延びようとします。

多くの命が失われていく物語のなかで、二人の友情はわずかな救いでした。

いつ命を失ってもおかしくない状況だからこそ、誰かと食事をし、言葉を交わし、そばにいることの重さが伝わってきます。

「功績係」が事実を書き換える怖さ

田丸が任された「功績係」も、強く印象に残りました。

田丸は亡くなった仲間の最期を、遺族に向けて書き記します。

しかし、実際の死がどれほど苦しく、あっけないものだったとしても、そのまま書くとは限りません。

残された家族のため、立派に戦った最期として美しく仕立てることもあります。

家族を思って書いた文章である一方、戦場で起きた事実が都合よく書き換えられていく怖さも感じました。

戦争では人の命だけでなく、その人がどのように生き、どのように亡くなったのかという記憶まで変えられてしまうのかもしれません。

優秀な軍人だった島田少尉の影響力

島田少尉は、米軍の食料を奪う作戦を成功させるなど、極限状態のなかでも部下を生き延びさせてきた優秀な軍人でした。

兵士たちから厚く信頼され、泉一等兵からは心酔される存在でもあります。

だからこそ、島田少尉の判断が部隊全体に与える影響は非常に大きかったのでしょう。

彼らは日本の敗戦を知らされないまま、戦争が続いていると信じて潜伏生活を送ります。

その状況では、島田少尉の命令に従うことが、生き残るための唯一の道だったのかもしれません。

島田少尉自身も、軍人としての責任と価値観のなかで生きるしかなかった人物に見えました。

優秀で、部下から信頼される軍人だったからこそ、その判断が兵士たちの運命を大きく左右してしまったことに、やりきれなさを感じます。

泉一等兵の口紅に込められた感情

泉一等兵と島田少尉の関係も印象に残りました。

泉が島田少尉へ向けていた感情が、尊敬や心酔だけだったのか、それとも恋愛感情を含んでいたのかは明確に語られません。

口紅を塗る描写もあり、泉が自身の性別や在り方について、言葉にできない思いを抱えていたようにも見えました。

ただし、泉をトランスジェンダーだったと断定することはできません。

答えが示されないからこそ、あの口紅にはどのような意味があったのか、鑑賞後も考えさせられます。

終戦の日を迎えても、戦争は終わらない

この映画を観て最も強く感じたのは、戦争は終戦を迎えた日だけでは終わらないということです。

日本では終戦を迎えていても、ペリリュー島で潜伏していた兵士たちは、その事実を知りませんでした。

戦争が終わったと知らなければ、兵士たちにとって戦争は続いています。

さらに、後から終戦を伝えられても、それまで信じてきた命令や価値観を、すぐに捨てられるとは限りません。

戦争によって植え付けられた考え方は、人の心の中に残り続ける。

戦争とは、国同士の戦闘が終われば、すべて終わるものではないのだと思いました。

原作との違い

原作をそのまま短くした映画ではない

私は原作をほんの数話しか読んでいないため、細かな違いまでは比較できません。

ただ、映画は原作漫画をそのまま短くまとめた作品ではなく、物語の順番や構成、展開が映画用に再構成されています。

原作者の武田一義さんによると、原作本編11巻と外伝4巻、合計15冊分の情報から、映画に入れるものと入れないものを選ぶ作業だったそうです。

原作とは異なるエピソード構成になった部分がある一方で、キャラクターの本質や性格は変えないように制作されています。武田一義さんのインタビューでは、幅広い世代が鑑賞できるよう、原作の特に残酷な部分や一部のエピソードを映画では外したことも語られています。

そのため、原作を読んでいる人は違いに戸惑う可能性もあります。

一方で、映画をきっかけに原作を読み、映画では描かれなかった人物や出来事を知る楽しみもありそうです。

私も原作を改めて最初から読んでみたくなりました。

気になったところ

大きな不満はなかった

鑑賞していて、大きく気になったところはありませんでした。

原作15冊分の物語を106分の映画にまとめているため、登場人物や出来事によっては、もう少し詳しく見たいと感じる部分もあります。

ただし、映画として伝えたいテーマは明確で、田丸と吉敷の友情や、戦場で命が失われていく怖さは十分に伝わってきました。

原作とは違う部分があることを理解したうえで、一本の映画として観るのがよいと思います。

総評

映画『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』は、かわいらしい絵柄だからこそ、戦争の残酷さが強く刺さる作品でした。

田丸と吉敷の友情、「功績係」が仲間の死を書き換える怖さ、そして日本の敗戦を知らないまま潜伏を続ける兵士たち。

戦争は、誰かの命を奪うだけではありません。

命令や価値観によって人の考え方を縛り、戦闘が終わったあとも、その人の中に残り続けます。

特に、終戦後の仲間内で起きる出来事には、戦争が人間に残す傷の深さを感じました。

中学生や高校生など、戦争を遠い過去の出来事として感じている若い世代にも観てほしい作品です。

かわいい絵柄だから観やすいというより、かわいい絵柄だからこそ、死の突然さと戦場の異常さが忘れられなくなる。

見た目から想像する以上に、重く心に残る戦争映画でした。

評価:★★★★☆ 4.0

30代男のひとこと

戦争は、国が終わったと宣言すれば、それですべてが終わるわけではない。

かわいい絵柄の向こうにある現実が、観終わったあとも頭から離れませんでした。

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